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臨床心臓発生学からみた内臓心房錯位症候群
2007 / 12 / 10 ( Mon )
けんちゃんの心臓や脾臓が、そもそも何でこうなってしまったか・・・
それはもう「心臓の発生の過程で何らかの伝達ミスがあって、心臓・脾臓をはじめとするさまざまな内臓の位置や形が正常とは異なる位置・形となった」それが「内臓心房錯位症候群(多くの場合、無脾症か多脾症)」
私のような医学の素人にはこれ以上の説明はもう必要ないでしょ、と思う。
思いながらも、うっかり図書館で興味深い本を見つけてしまった(笑)

『先天性心疾患を理解するための臨床心臓発生学』
(山岸敬幸・白石公/編 メジカルレビュー社)


難しくて私の理解の範疇を超えている箇所も多々アリ。
けんちゃんの病気に関係している箇所は頑張って理解できるように努めてみた。
内臓心房錯位症候群に関しても「左右軸の決定とその異常・内臓錯位症候群」というタイトルで読み応えのある論文が掲載されています。
メモとして、私が理解した内容を簡単にまとめてここに書き記しておこうかと。
難しい話になると思います。
わからないことがあっても、私に質問しないでね(笑)

縦長の筒型をしている原始心筒(haeart tube)が向かって右側に屈曲(looping)して心ループを形成するのが胎生22~24日頃。
(ちなみに「胎生」とは受精した日を「胎生1日」と数える。妊娠週数でいくと胎生22日は妊娠5~6週。発生学では妊娠日数ではなく胎生日数で表記するのが普通で、妊娠日数とは2週間のズレがある)
この「心ループ」は、心臓の”外形”を決定する最も重要な過程
その重要な過程で、正常の右ループ(d-loop)ではなく、うっかり左向きにループ(l-loop)してしまったのがけんちゃんの心臓(=右胸心)

向きが逆になると多くの場合、心室・心房の位置や形態、流入・流出経路(大血管)の位置や形態にさまざまな異常が発生する。
そしてこのl-loopが起きたとき、心臓以外の内臓(主に肺・胃・肝臓・脾臓)にも影響がある場合がある。
マウスの実験では、内臓心房錯位をわざと誘発するためのレチノイン酸投与を行ったマウス胚のうち、内臓の正位(正常な位置)が57%、逆位(位置が左右逆)が6%、右側相同(強く右側の要素を持つ=無脾症)が35%、左側相同(強く左側の要素を持つ=多脾症)が2% であったという報告がある。

通常は右にループするものが左へループしてしまった。
その左右軸の決定に関与するものは何か?
胚の「node」という細胞の中心部にある線毛が、らせん運動により一定方向に回転し、左向きの流れを発生させている(nodal flow)。
この流れによって内臓を形成する因子が胚の左側に運ばれる結果、左右軸が決定するのではないかと考えられている。
実際、nodal flow を人工的に逆回転にすると左右軸も逆になるという実験結果が出ている。
線毛を運動させるためのダイニンという蛋白が無い(=nodal flow が発生しない)場合やその流れを感知して左右軸情報を伝達する分子に障害が起こると、左右軸がランダムになり内臓心房錯位症候群を発症する。


発生学的にわかっている内臓心房錯位のメカニズムはここまで。
なぜダイニンが欠失するのか、なぜ情報伝達に障害が起こるのかを究明するのが今後の研究課題。
また、従来は内臓心房錯位の発生は散発的で遺伝的な関連性は低いとされてきたが、近親者の内臓心房錯位の集積も報告されていることや、最近、内臓心房錯位症例においていくつかの遺伝子の変異が検出されていることから、遺伝的な関連性についても現在さまざまな研究がなされており、今後徐々に解明されていくと期待されている。

【内臓心房錯位症候群に伴う心疾患の形態】

<形態>     <無脾症>       <多脾症>

上大静脈
    両側(46~71%)         両側(33~50%)
下大静脈
    両側(16~28%)       奇静脈断続(58~100%)
肺静脈
     還流異常(64~72%)      還流異常(37~50%)
静脈洞中隔
  欠損(80~85%)         欠損(26~42%)
心臓中隔
    共通心房(57%)         共通心房(25~30%)
房室弁
     共通房室弁(84~92%)     共通房室弁(80%)
心室
       1室/低形成(44~55%)     1室/低形成(37%)
心臓の位置
  右胸心(36~41%)        右胸心(33~42%)
流出路
 肺動脈狭窄/閉鎖(88~96%) 肺動脈狭窄/閉鎖(42~43%)
                        大動脈弁狭窄/閉鎖(17~22%)
大血管関係
   DORV(82%)、TGA(9%)      DORV(17~37%)
冠状動脈
    単一冠状動脈(19%)      二冠状動脈
肝臓
       両側対称(76~91%)      両側対称(50~67%)
肺小葉
      二葉(81~93%)        二葉(72~81%)
気管支の位置
  動脈上(95%)         動脈下(68~88%)  
無脾症の肺小葉が「二葉」となっているけど、これ「三葉」の間違いじゃ?と生意気なことを言ってみる・・・


以前、別の本から出典した合併症の割合(→click!)と異なる箇所があります。
調査対象が違うと数字にも大きな違いがでてきてしまうのか?
その以前の記事で、多脾症単心室が1割しかいないのか・・・という寂しい思いを綴ったけど、この資料からいくと単心室とみなす低形成をあわせたら37%。
仲間がたくさんいると思うとちょっと心強い。

多脾症はほぼ全例に下大静脈の異常がみられ、「下半身からの静脈血は奇静脈/半奇静脈を介して上大静脈に還流することが多い(IVC interrupution with azygos/hemiazygos connection)」。
けんちゃんの場合、下大静脈に異常があるという説明は受けたことがないけれど、もしかしたら通常の下大静脈並みに「非常に拡大した奇静脈」がその役割を担っているのかもしれない。
通常右側にしかない上大静脈が両側にあって(左上大静脈遺残=胎生50日ごろまでは左右両側にあった上主静脈が、胎生55日ごろになると左右の間をつなぐ無名静脈が形成され左総主静脈は退化していき左上大静脈靭帯となるのが正常の過程だが、この左総主静脈が消退せずに残ってしまっている状態)、おまけに右上大静脈はかなり細い。
両側上大静脈と下大静脈のつながりはどうなっていたんだろう・・・?と今更思う。
なぜ過去形かというと、すでに上大静脈は両側とも直接肺動脈に吻合していて、下大静脈との連続性が断たれているからです(1年前に受けた両方向性グレン手術により)
こういうことをよく踏まえた上でカテーテル検査の画像をよく見たら、けんちゃんの心臓周辺の血行動態がより理解できたのかな。すでに遅いけど・・・それとも素人には結局何がなんだかわからないままだったかな。

また、無脾症・多脾症ともに「刺激伝導系の異常が高率に発生する」らしい。
どういう意味?と思いながらこの記事をUPしてお買い物に出かけたら、その道すがら急にひらめいた!
これって、不整脈が多いって意味だ!と。
そう・・・だよね?

錆びついた頭をフル回転させてこの記事を書き上げるのに、丸2日もかかりました(笑)
興味のある方、ぜひこの本読んでみてください。
あ、定価は9800円+税 なので、図書館でどうぞ。
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10 : 12 : 49 | 病気の説明 | トラックバック(0) | コメント(13) | page top
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コメント
--No title--

む・むずかしい・・でも興味深く読ませていただきました!
この本、読んでみたいなあ。
図書館なんて、もう何年も行ってないけど借りに行ってみようかなと思います。
by: ぐみ * 2007/12/10 13:10 * URL [ 編集 ] | page top
--No title--

>ぐみさんへ
読んでくれてありがとう~。
難しいよね(笑)
でも、本は図や写真付きで解説してあるので、もっとわかりやすいです。
図書館にあったらぜひ読んでみてください♪
by: てん * 2007/12/10 22:38 * URL [ 編集 ] | page top
--No title--

こんにちは。
発生学的に、とかって、学生時代の授業を思い出してしまいました。
山岸先生って、うちの子の担当医の先生方のうちの一人なんです!!

うちの子、動脈管が閉じてきてしまい、9日に緊急手術しました!14日が予定だったので少し早まりましたが無事終わりました☆
術後はまだサチュレーションが低く酸素送っていますが…
by: イズミ * 2007/12/11 07:17 * URL [ 編集 ] | page top
--No title--

>イズミさんへ
12月になったので、そろそろ手術しているのかなと思っていたところでした。無事終了おめでとうございます!
順調に回復して、早く退院できますように☆
イズミさんも疲れがたまってらっしゃる頃ではないでしょうか。
お互い風邪には気をつけましょうね。
by: てん * 2007/12/11 11:05 * URL [ 編集 ] | page top
--No title--

興味深く拝見しました。が難しい。
てんさん、すごい。やっぱ賢い人なんだなあ・・。うちは下大静脈欠損って言われたからないのは、はっきりしているけど、奇静脈がどこからどうなっているのか、(聞いたんだろうけど)分かってないままです。もっと勉強してたらこの前のカテの映像も、もっと興味持てたかも。本、図書館に予約入れてみます。田舎の図書館だからあるだろうか。
by: こかず * 2007/12/11 13:20 * URL [ 編集 ] | page top
--No title--

難しい話!てんさん偉い!また色いろ教えてね!
実際、まだまだ解明されていない謎だらけの領域なんだろうね。

うちはカテの時に「下大静脈欠損だよね」と言われて、何のこっちゃ?と思ったもの。
実際、多脾の子は無いのが普通らしいね。

私ももうちょっと勉強しなくっちゃー!
by: くるみん * 2007/12/11 20:02 * URL [ 編集 ] | page top
--No title--

>こかずさんへ
難しいですよね~。
この記事を書きながら何度も本を読み直しました^^;
11月に出版されたばかりの本なので、図書館にないようなら買ってもらえるようにリクエストしちゃいましょう!
by: てん * 2007/12/12 00:08 * URL [ 編集 ] | page top
--No title--

すごいですね~。。漢字と不思議な単語が出てきて頭が混乱しましたが・・・(^^;)なんとなくわかりました。すごい勉強になりました。
そう、「なんで情報伝達に障害が起こるのか」ってとこですよね。。
まぁ何がいけなかったのか、、なんて知らない方がいいのかな。

今度病院の図書室行ってみてこようっと。
by: めぐ*リン * 2007/12/12 00:10 * URL [ 編集 ] | page top
--No title--

>くるみんさんへ
本ではね、図解もされているから言葉だけよりもわかりやすいんだけど、それでも「?」ばっかりよ^^;
そんな状態で記事を書いているから、これだけを読んだ人はもっと「???」だよね~(笑)
下大静脈は右側情報に基づいて形成されるから、左側情報しかない多脾症の子には理論上存在しないのが当たり前みたいだよね・・・
今度先生に聞いてみよう。
「あれ?欠損しているって言ってなかったっけ?」って言われたりして!?
by: てん * 2007/12/12 00:14 * URL [ 編集 ] | page top
--No title--

> めぐ*リンさんへ
そうそう、私も何となくわかったってかんじ(そんな状態でエラソーに記事にするなって?^^;)
そして、原因の解明はここまででいいともやっぱり思う。
だって、もし妊娠初期に何かに気をつけていれば病気にならずに済んでいたのかも・・・ってなったら悲しすぎるよね。
by: てん * 2007/12/13 23:41 * URL [ 編集 ] | page top
--No title--

ひゃ~~何度も読み返してるんだけど・・むずかし~~~。むずかしすぎる~~~~。
てんサンってホントに勉強家よね。
私、どことどこの静脈?動脈??んん??ってレベルだから・・・。
もっと勉強しなさいって感じよね。
家庭教師に来てくださ~~い(笑)
by: にんにん * 2007/12/15 00:04 * URL [ 編集 ] | page top
--No title--

>にんにんさんへ
あはは^^;
記事の冒頭にも書いたけど、何もここまで勉強する必要ないのよね、ほんとは。
でもいろんなことを知っておかないと気がすまない!っていうのは、私が相当しつこい性格ってことかしら。
どんなに勉強したって、到底理解できないことだらけなのにね~。
by: てん * 2007/12/15 16:11 * URL [ 編集 ] | page top
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
by: * 2010/01/27 21:50 * [ 編集 ] | page top
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