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左上大静脈に関すること
2008 / 02 / 17 ( Sun )
今まであちこちで少しずつ書いてきた「左上大静脈遺残」に関することを、一旦まとめておこうと思う。
2日1回ぐらいの割合で「左上大静脈」とか「PLSVC」というキーワード検索でこちらを訪問される方もいらっしゃるようだし。

「PLSVC」は「persistent left superior vena cava」の略。
左上大静脈遺残(さじょうだいじょうみゃくいざん)は「両側上大静脈」とも言われる。
その名の通り、通常は1本(右上大静脈のみ)の上大静脈が左右2本あること。
なぜ「遺残」というかというと、左上大静脈は「左総主静脈」という名前で胎児期には誰にでも存在する血管で、それがそのまま残ってしまったから。

心臓発生学からいうと、胎生50日ごろまでは左右両側にあった上主静脈が、胎生55日ごろになると左右の間をつなぐ無名静脈が形成され、左総主静脈は退化していき左上大静脈靭帯となるのが正常。
満期胎児の上大静脈は、左側から戻ってくる静脈は「左腕頭静脈」を通って右上大静脈に合流し右心房に流入する形となっている。

この「左上大静脈遺残」に関する資料や参考文献はとても少ない。
けんちゃんの場合、多脾症候群に関する文献も極めて少ないのだけれど、その中でも左上大静脈遺残に関して詳しくまとめられている文献は、心臓病の専門書でもほとんどない。
全く触れていなかったりもする。
だから、『先天性心疾患を理解するための臨床心臓発生学』(山岸敬幸・白石公/編 メジカルレビュー社)の「体静脈の発生と異常」の章で、どういう過程で左上大静脈遺残になってしまうのかがよくわかる図説を見たときにはゾクゾクしたぐらいだ(笑)

ネット上で公開されている病気の略語集で、この「PLSVC」が載っていると「このページ、なかなかやるな」と思ってしまう。
たとえばこことか↓
http://trhome.med.u-tokai.ac.jp/contents/TC/ryakugo.htm
それが「使えるサイト」かどうかを判断するひとつの基準にしている(あくまで私の判断基準です)。

聞いたところによると(どこで見聞したかは忘れた・・・)胸部の静脈奇形のうち「左上大静脈遺残」は最も頻度が高く、心疾患に限らず健康な人にも見られることがあるんだとか。

左上大静脈は、それがどこに還流しているのかというのが問題となる。
左心房に直接つながるタイプ、右心房に直接つながるタイプ、遠回りして右上大静脈につながるタイプ、冠状静脈洞(心臓とつながっている静脈の主幹部分)につながるタイプなどがある。
(ほとんどの場合、特に健康な正常心の人は左上大静脈は冠状静脈洞につながっていて問題ないらしい)
このうち注意が必要なのは左心房に直接つながっているタイプで、心疾患の心内修復手術を行う際、この左上大静脈をそのままにしておくとチアノーゼが残ってしまうため、左心房から切り離して右上大静脈に吻合する手術が必要となる。
距離が近い場合は直接吻合、遠くて直接吻合が無理な場合は人工血管を用いたバイパス手術をすることになる。

人工心肺の使用に関しても、左上大静脈に注意をはらう必要がある。
左上大静脈の血流が右上大静脈や冠状静脈洞を通して右心房に還流している場合には、人工心肺使用中に左上大静脈を一時的に遮断しても問題ないとされている。
そうでない場合(たとえば左心房につながっていたりするとき)は脱血管をもう1本、左上大静脈にいれる必要がある。
脱血管をもう1本入れるか一時的な遮断ですむのかは、左上大静脈の圧をはかり、遮断した際の静脈圧が20?Hgを越えなければ一時遮断で問題ないとされている。
さらに、左上大静脈がある場合は心筋保護液を冠状静脈洞から注入する「逆行性心筋保護」が困難な場合があるので注意が必要。
また、左右両側の上大静脈の太さや血流量をあらかじめ把握しておく必要がある。
このようなことを怠ると、術中にとんでもないことになるので要注意。
当たり前のことだけど、事前の心臓近辺の血行動態の把握はとても重要なんだね、と改めて思う。(もちろんこれぐらいのこと、どこの病院でもきちんとやってくれているんだろうけど)

左上大静脈遺残っていうやつは、たくさん並んだ病名の最後のほうにオマケのようにくっついていて(書かれていないことすらある)ろくに説明もしてもらえないんだけど、実はこのように結構「クセモノ」だったりするのだ。


改めて、けんちゃんの上大静脈のことを考えてみる。
けんけんの心臓(クリックすると大きくなります)

↑ 病気の説明のページにも同じ図を載せているけれど
これがけんちゃんの心臓。
(現在はグレン手術まで終了しているから、左右の上大静脈は心臓にはつながっていない)
これは、循環器内科の医師にかいてもらった図。
健康な人の心臓のおおまかな形状を御存知の方なら、けんちゃんの心臓がいかにそれとは異なるものであるかがわかると思う。
心臓の向きからして違っているし^^;

思い込みの激しい私は、けんちゃんが生まれたあとにこの図をもとに説明を聞いたとき、上大静脈も下大静脈も細く書いてあるのはあまり問題がないからなんだと勝手に思っていた。(肺も小さく書いてあるし)
でもそうじゃなくて、ほんとにこの絵のとおり細かったんだ!と気づいたのは、グレンの前に「上大静脈が左右に分かれているせいで、1本1本が普通より細い。だから右大静脈が点滴の影響で閉鎖している」という説明を受けたとき。
グレン手術前の私のように「上大静脈が2本あるのは知っているけど、メインの右上大静脈は普通の太さがあって、左側はオマケなんでしょ?」と勝手に思い込んでいるとあとで後悔することになる(→click!

そして、今日この図を見ていて新たな疑問が!
もうすぐけんちゃんが生まれて1年半もたとうとしているのに、この図だって何度も見たはずなのにどうして気づかなかったの!?と驚いてしまった。
・・・・けんちゃんの大動脈、右心室から出ていません?Σ( ̄□ ̄;)
通常、大動脈は左心室につながっているはず。
これって、この流出経路の異常だけを見ると「両大血管右室起始」ってやつなのでは?
でも、「両大血管」のうちのひとつ(=肺動脈)は閉鎖していて、肺動脈弁は痕跡すらないみたいだし、右胸心で向きが逆だからどっちが右心室でどっちが左心室?ってかんじだし、そもそも単心室だから右も左もないだろとも思うし(一応「右室性単心室」らしいけど)、どうせフォンタン手術しちゃえば心臓は左心の役割だけを担うことになるんだから大動脈がしっかりしてるんだったらどうだっていいだろ、ってかんじだけど^^;

あーーー、けんちゃんの心臓があまりにも正常心とは異なる単純すぎる形状なのと(複雑心奇形のくせに「単純」っていうのもおかしいけど)、大動脈は完全にノーマークだったから気づかなかったな~(と言い訳してみる)。
勉強したらしたで新たな疑問がどんどん出てくるし、いくらあれこれ調べても結局けんちゃんの心臓や体のことをまったく理解しきれていないし、所詮素人はこの程度なんだなと、ちょっぴり落ち込んだけれど、それでもいいさ。
これから先も、けんちゃんの病気の理解は私のライフワークとして頑張っていくんだい!
(どんな終わり方だ・・・)


参考文献
『先天性心疾患を理解するための臨床心臓発生学』(山岸敬幸・白石公/編 メジカルレビュー社)
『最新 人工心肺 理論と実際』(阿部稔雄・上田裕一/編 名古屋大学出版会)

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コメント
--No title--

てんさんこんにちわ~。

私もこうやって文字に起こせるぐらい自分の理解を深めたいです…。
でも調べれば調べるほど奥が深く、まだまだ勉強不足」だなぁと思いますよね。

さてさて、けんちゃんも両大血管右室起始症でいいんじゃないでしょうか?
蒼の心臓もまさにけんちゃん同様、肺動脈が心室から出てないけど
DORVの診断が出てますし、メイン疾患の1つにされています。
当初から主人と「大血管1つしかないのに…ねぇ?」と話してましたけど
もし肺動脈があったとしたら、右室から出てたんだから
あながち間違ってはいないって事で納得していました(笑)
あとウチは大動脈が左ではなく右にカーブしてるのでやはり図にするとギョッとします^^;

とにもかくにもやはりけんちゃんとは他人のような気がしません。
単心室の子にも肺動脈閉鎖の子にも未だ出会った事ありません。
by: coco * 2008/02/21 18:45 * URL [ 編集 ] | page top
--No title--

コメントありがとう!
DORVなんじゃないかって気づいたときに、あおくんもたしか肺動脈閉鎖とDORVだったよね?どういう状態なのかcocoさんに聞いてみよう!と思ったのです。いや、ほんとに。
教えてくれてありがとう♪
すごいね、ほんとにここまで病名が一致しているだなんて!
by: てん * 2008/02/21 21:57 * URL [ 編集 ] | page top
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